ESSAY

全入時代の大学選び
    東京学芸大学国際教育センター・教授 佐藤郡衛
(略歴)大学院卒業後、研究所勤務を経て、15年前に東京学芸大学海外子女センター(現在は国際教育センター)に赴任。以来、海外・帰国子女教育の研究を続けている。

●競争にさらされる大学

 海外で生活している高校生のみなさん。いま、大学には改革の嵐が吹き荒れています。大学に身を置く人たちに大変なのですが、高校生のみなさんにとっては、大変いい風が吹いているように思います。
 大学はいまこぞって第三者からの評価(外部評価)を受けようとしています。入試の難易度だけでなく、その大学の持つ研究内容、水準、講義内容、施設、キャンパスライフ、卒業生の質などを多くの項目について客観的な評価が行われようとしています。このことはとても重要です。どの大学に入れば何ができるかがこの第三者評価ではっきりわかります。これは「大学評価・学位授与機構」というところから公表されますので、みなさんにとって大学を選ぶ有効な基準になるはずです。
 また、「大学の授業はつまらない」と不評でしたが、大学教員の授業改善が急速に進み始めました。みなさんは、Faculty Developmentという言葉を聞いたことがありますか。これは、大学教員の能力開発ということで、教授方法の改善を主目的にしたものです。最近、各大学が独自にベストティチャーを選ぶようになってきました。また、学生による授業評価も多くの大学で行われています。大学によっては、授業の上手な教員を給与面で優遇しようという動きもあります。学生に対して質の高いサービスを提供しているのはやはりアメリカでしょう。いち早く授業改善と授業評価を取り入れたからこそ、アメリカの大学は世界的に優れた評価を得ているのだと思います。
 いい卒業生を送り出すために、いい教育を提供するという当たり前のことが、ようやく競争の時代で現実のものになってきました。また、雇用状況の悪化により、各大学とも卒業生にいかに付加価値をつけるかが課題になってきています。そうした付加価値をどの大学のどの学部がどの程度提供しているかを自分の目で確かめてください。それをしないと卒業時に大きなツケが回ってきます。大学をみなさんが自由に選べるということは、それだけ自己責任が大きくなることを意味します。

●「帰国子女」の時代再び
 こうした大学改革の中で、大学も当然入学者を選ぶ方法に工夫を凝らすようになってきました。特に、人気のある大学ではその傾向が強くなっています。これまで各大学とも受験生に迎合して、受験科目を削減してきました。その結果、学力低下がおき優秀な卒業生を送り出せない事態になっています。そこで、最近、脚光を浴びているのがAO(アドミッション・オフィス)入試です。ご存知のように、10年ほど前に、慶應義塾大学藤沢キャンパスではじめて実施したものです。受験生の多面的な能力を丁寧に評価するこの方法を導入しようとする大学が増えています。
 AO入試が実施されれば、「帰国子女」のみなさんにとっては有利になります。海外での学習歴、成績を積極的に考慮してくれるからです。これまで大学入試は、「帰国子女枠」や特別選抜という方法が中心でした。それが、海外での学習をより積極的に考慮してくれるようになります。特別の受験勉強から解放されますので、「帰国子女」のみなさんにとっては有利に働くのではないでしょうか。
 ただ、AO入試で選抜した学生のために特別なカリキュラムが用意されているかどうかが重要になります。これまでどの大学でも、入り口の改革には熱心でしたが、入った後の対応は全くしていませんでした。入学後に、どのような対応をしているかに是非関心を持ってください。大学の中には、特別に「日本語学習」「日本社会」などの講義を用意したり、英語での授業を開講したりしているところもあります。こうしたことも、大学の評価の対象になってきますので、注意してみてください。
 大学はいま改革のまっただ中にあります。各大学は、ホームページを通して刻々を改革の様子を発信しています。受験生や学生を主体にしたホームページがつくられているか、早速志望大学のページをのぞいてみてください。最初のページが学長挨拶や理事長挨拶で始まるような大学は改革が進んでいるとは思えません。質の高い教育を提供する大学こそが生き残っていきます。大学を淘汰するのはあなた自身です。


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