ESSAY

反抗期
          代々木ゼミナール現代文・小論文・個別指導講師
 木村 勧
 
●反抗期の先は・・・ 
 私は、あれこれ考えるのが好きだ。どうでも良いこと、日々の生活には直接関係ないと思われることを考えるのが好きらしい。よく家で話もする。
 家の中では、専ら家内が聞き役になってくれている。「またはじまった。」家内はそんな表情を一瞬浮べるが、つきあってくれている。そんな、あれこれ考えた話の1つ。 家に思春期の息子がいる。ちょっと反抗期らしい。あまりなれなれしく話しかけてもらいたくないようだ。「今日学校で何があった?」「ふつう。」ボソッと答える。「いつもと変わったことはない?」「べつに…。」「特に…。」少し前に話題になった女優さんのような答え方をする。家内と「やっぱり反抗期だねぇ。」なんて話に落ち着く。そうして、私の“どうでも良いこと回路”が始動する。「…で、反抗期って何だ?」

  こんなとき、いつも私の考える方向は決まっている。キーワードは、「そもそも」だ。とりあえず原点に戻って考えようとするわけだ。延々とあきもせず「原点」を求めて考え続ける。「(自問)そもそも何ゆえ人は反抗期を迎えるのか?」「(自答)それは、親からの自立を図るためだ。」続けて聞く、「(自問)では、なぜ反抗することが自立を図ることになるのか?」「(自答)それは、周囲から離れて、1人静かに自分を観察できるからだ。その結果、自分としての基準ができるのだ。そしてそれが、大人になるということだ。」「(自問)ならば、大人になったらなぜ反抗しないのか?」「(自答)それはもはや自立していて、自分の基準を改めて問い直す必要がないからだ。」「(自問)では、大人は、自分を問い直し、反省する必要はないのか?」あれ?おかしい?「大人が反省する必要がないだと??ありえないではないか!!大人の反省と思春期の子どもの反省って、違うのか?…」、こんな具合だ。

  たどり着いた結論をまとめてみる。こんな風になった。なぜかおとぎ話風のストーリーになってしまった。題して、
 『やたら反抗する奴』
 ある所に赤ん坊がいた。すくすくと親の庇護のもとで育っていった。毎日を何の疑いもなく、「自分として」過ごしていた。しかしある日、かつて見たことのない人間が目の前に現れる。そいつが失礼なことを言う。「おまえ変だぞ。」で、言い返す。「別にいいじゃないか、誰もほかの奴はオレのことを変だなんて言わないんだから。」そいつも負けていない。「じゃあ、なにか?お前はそのままでいいと思っているのか?」しつこい問いかけに閉口してだんまりを決め込もうとするが、腹の虫が治まらない。「やっぱり、言い返してやろう。でも言い返したら、また言い返されるんだろうな。くそっ。どうすりゃいいんだ……。」もはや言葉は出ない。ただただ、「だんまり」の1手あるのみ……。
 そこで、この物語は次のステージに進む。けれども、展開は大きく2つに分かれる。この物語には、2通りの結末が用意されるのだ。

●2つの結末―「めでたし」はどっち? 
  1つ目の結末はこうだ。結局、自分がその相手を言い負かして、勝利する。たとえば、そいつに「でも改めて考えたんだが、ほら、こんな風にねクドクド・クドクド〜〜だからクドクド・クドクド、〜〜オレって結局、結構イケてるわけだろ?」相手は疲れてうんざりしてくる。「もうわかったよ。好きにしな!」「ヘッヘッ。オレの勝ちだね。」後はそいつを無視し、安心して「自分として」生きていった、という結末。
  2つめの結末は、この相手にどうしても勝てないというものだ。最後までずっと相手は自分に反抗し、嫌がらせを言い続けてくる。自分は、大人になっても常に惨めな思いと腹立たしさを抱きながら生き続けていった、という結末。

  さて、この2つの結末が、一体何を示そうとしているのか分かるだろうか?わからない??この物語は思春期つまり反抗期を迎えた子どもがどういう風にして「大人」になるか、という話だった。だとしたら、この主人公が出会った相手って誰だろう?それは、「もう1人の自分」なのだ。自分が自分に対して問答を繰り返す中で、やがて「もう1人の自分=自己批判的な自分」を手なずけてしまう、というのが結末の1。「もう1人の自分」を手なずけきれずに、大人になっても最後まで自己批判を受け続ける、つまり常に自分を相対視する姿勢、他者の目から見た自分を自分の中に保ち続けていく、というのが結末の2。

  私がたどり着いた結末は、以上の通りだ。ただ、おとぎ話なら、物語の「その後」が気になる。2つの結末を迎えたそれぞれの主人公が過ごしたのは、どんな人生なのか?もう少し続けて考えてみた。「…で、“めでたし、めでたし”はどっちだ?」……。
 結末の1のように気楽に生きた末に来るものは?結末の2のように悩み苦しみながら生きる末に来るものは?うーん…ここから先は諸君に任せよう。めいめいがじっくり考えて選び、自分の人生の「めでたし」を迎えてほしいと思う。


| ESSAYメニュー |