ESSAY

地域の大学もグローバル人材育成に向けて取り組んでいます。
          
岡山大学大学院自然科学研究科教授
田原 誠  
          
外国語教育センター副センター長などを務める中、国際バカロレア資格者受け入れを提案し制度化。専門は植物遺伝学で修士・博士号は米国で取得。
   

●グローバル人材育成に向けての政府提言 
 「元気な日本復活」をめざす政府の新成長戦略の重要な柱として、グローバル人材育成推進のための提言がなされました(「グローバル人材育成推進会議中間まとめ」2011年6月22日)。21世紀の世界は、経済・産業のみならず、人口・環境・エネルギーなどの課題も、国境を越えたグローバルな対応が不可欠であり、その中核を支える人材の育成に政府、教育関係者、企業、保護者が連動して対応すべきであるとしています。
 私が所属する岡山大学も、中国四国地域の中核総合大学として、グローバル人材の育成に繋がる大学改革に地道に取り組んできました。

●国際バカロレア資格者の受け入れ 
 国際バカロレア資格者について、2011年4月入学から積極的に受け入れる制度を導入しました。これは、国立大学としては初めてで、公私立大学でも、一部の大学の国際関係学部で実施されているだけでした。国際バカロレア資格については、大学受験資格の一つとして、その名前は大学関係者には以前から広く知られています。しかし、国際バカロレアの教育目標はグローバル人材育成が理想とするものとよく一致すること、成績の評価が国際的に標準化されていて年度や学校間で格差がなく、欧米の大学は最終成績を基本に学生に入学許可を与えていることなどは、ほとんど知られていません。このため、学内プロジェクトとして、国際バカロレア機構やバカロレア校から講師を招いて講演会を開催して学内の啓発を進めるとともに、入試や学部の教務担当教員をバカロレア校に調査派遣するなどの準備を重ねました。制度導入決定後は、国際バカロレア資格者の受け入れに積極的な海外の大学における招聘策、入学後の教育プログラムなどを調査しています。このような検討を踏まえて、受験者の合格発表は8月末日とし、10月から入学前の3月までは、合格者が補習的な講義を聴講できるなどの対応を始めています。

●英語や留学に意欲的な学生への配慮 
   正規の英語授業の他に、気楽に英語会話のレッスンを受け、留学生との交流などを通して異文化との交流を進める「イングリッシュ・カフェ」を設置しています。このカフェの運営は、教養教育担当のセンターに所属する英語系の教員が専任で運営にあたっており、同センターの英語ネイティブ教員のオフィス・アワー開催など、正規の英語教育との連携を図っています。また、奨学金支給や単位互換が可能な協定大学に留学する学生の英語トレーニングや留学生との交流、さらに、帰国後の英語力の維持や後輩学生へのアドバイスの場としても使っています。これらに加えて、就職支援などを行うキャリア開発センターとも連携し、キャリア・プランニング上、留学経験が重要と見られる学生には、留年となる可能性が少ない2年次生での留学を勧め、それが実現するようにカフェが協力しています。カフェやキャリアセンターなどの組織や留学制度は、個別にはどの大学にも整備されているでしょう。本学は、学内の連携を進め、意欲的な学生が留学などの機会を十分に活用できるよう運営に配慮しています。

●グローバルに活躍できる人材を目標に努力を! 
 グローバル人材育成については、最近、文部科学省、経済産業省主催の会議、経団連などからも多くの提言がなされています。これらの提言が理想とする人物像の要素は、上記「中間まとめ」の中の、1)語学力やコミュニケーション能力、2)主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感、3)異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティーに集約されます。このような要素を兼ね備えた人物像は、国際バカロレア教育がめざしてきたものであり、また、インターナショナルスクールでも、このような教育目標を理解した教育がなされていると思います。このため、「中間まとめ」には、政府が取り組むべき方針として、国際バカロレア教育機関の設置(200校)、資格者への対応を進めることに加えて、在外経験を有する者の積極的な受け入れ策などが提言されています。国際バカロレア学校やインターナショナルスクールなどで学ぶ皆さんは、これからのグローバルな日本社会を支える中核的な人材として、正に期待されています。また、日本の大学の取り組みも少しずつ加速されていくと思います。このような機会を積極的に利用して、高校までの在外経験を活かして、グローバルに活躍できる人材になっていただきたいと願っています。


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