ESSAY

地球を見据える鋭い眼を!
(帰国生への期待)
          
代々木ゼミナール国際教育センター 国語・小論文講師
木原 志保子
          
京都大学文学部哲学科卒業。専攻は心理学。臨床も目指したので医学部、教育学部も聴講。得意な語学はドイツ語。現在、日本画家でもあり、木原志保として日展、日春展など多数出品。
   

 代々木ゼミナールで、帰国生の小論文指導を担当している木原志保子です。高校で社会科や国語を教えていましたが、辞めて大手予備校で教えるようになったのは、純粋に「本物の授業」がしたかったから。
 私の言う「本物の授業」とは、現代日本で行われている典型的な一斉管理、暗記型の均一な授業でなく、生徒個人の主体的参加による自由思考型の個人の達成度に合わせた授業などです。


●日本の高校の特徴
 みなさんご存知のように、日本の高校では、大学受験を意識して膨大な分野の知識や解法を一方的に教え込むことが一般的です。海外で様々な学校生活や教育を体験した帰国生の多くは、日本の学校の在り方を対象化し、客観視できるはずです。もちろん、この方式によって日本は戦後ベビーブームの大量の子どもたちの学力を一斉に底上げでき、目覚しい復興を支えることができたのですが・・・、しかし「みんなで足並みそろえて」という形は非常に優秀なあるいはユニークな個性や才能をつぶしてしまい、現在の「指示待ち症候群」と呼ばれる国際社会では評価されない「おとなしくて優しいけど何を考えているかわからない」「サラリーマン的な群れ」としての生徒を大量生産することになってしまったのです。
 幸い、日本の「帰国生枠」の入試(一般生対象のAO入試などの方式も)は、細かい知識中心のテストではなく、日本語論文や外国語での意見表明、面接などの形で総合的に人物とその思考力やものを見る姿勢を問うような出題がされています。だからこそ、教えがいがあり、「考える力、判断力」や「自分と全く異なる価値観の隣人を受け入れ、理解しようとする姿勢」を探究する授業が目指せるのです。


●今、混迷の地球、人類
 自分の生きる時代の政治や経済やそれを支える制度や教育などの文化も確固たる「正解」を持たず、グローバリゼーションの中で多様化し、核の利用、軍備と戦争、難民問題、環境問題、自由と平等の並立困難、平和と安全保障など、問題は山積です。消費経済の弱肉強食の中で競争に勝ち残るためには理想を捨てないと無理なのか、あれもこれも取れないジレンマの内にあります。この時代に生きる以上、何らかの選択をせざるを得ません。たとえば、次世代の人々や人間以外の生物を守るためには現在、資源を節約し、合成化学物質の製造などを極端に制限しなければなりませんが、そうすれば反面、国家経済は停滞して国際競争力が激減し将来の国の自立や自由は脅かされざるを得ません。


●勉強の目的の変化
 今までの勉強は多分、自分の満足のため、両親を喜ばすためだったのでは?成績というスケールが明確で努力すればするほどその結果も達成感も得やすかったと思います。正解のはっきりしたものでした。求められていたのは自分の周囲の人々とのコミュニケーション能力です。たとえば、英語、数学やテキスト通りの日本史、語彙や漢字。これは、いままでの日本国内での教育に適応した真面目で優秀な人にとっては得意で楽しいものだったでしょう。
 一方、これから帰国生や社会のリーダーたちに求められるのは、現実を鋭く分析し、深く広く思考し、新しい価値観の創造に向かって模索する力とその表現伝達の能力です。たとえば、移民問題は?環境問題は?どういう知性が地球を救うのか、一緒に探っていく姿勢でしょう。そのための討論、入試課題文理解、自分の理解不能な相手とのコミュニケーションであり、それらを通して論理的説得力を養い生命や自然に対する感性を磨いていくことが必要なのではないでしょうか?単純ではないだけに、若い君たちのエネルギーと明るく前向きな姿勢があってこそ取り組め、思考する楽しさも生まれてくるのでしょう。
 一緒に楽しんで頑張りましょう!


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