ESSAY

日本の将来を担う帰国生の皆さんへ
          
代々木ゼミナール国際教育センター 国語・小論文講師
盛岡 真美子
          
代々木ゼミナール国際教育センターにて、現代文・小論文を担当。長年続けてきた音楽活動に区切りをつけ、最近は専らキャンプ&焚火に夢中。
   


●帰国生の魅力
 大阪南校で現代文・小論文を担当している盛岡です。帰国クラスを受け持つようになって20年近く経ち、生徒からもよく「先生も帰国生だと思っていた」などと言われるのですが、私自身は日本の教育制度で学んだ一般生です。ただ、学生時代の友人に帰国生が多く、今でも最も仲のよい親友は帰国生です。帰国生とは何故かウマが合うようです。
 そんな私にとって帰国生の一番の魅力は活気があること。これはかなり重要なことだと思っています。こちらからの働きかけに素直に反応を返してくれるので、授業も活き活きとしたものになり印象も深まります。活気がありすぎて圧倒されそうになることもありますが、シーンとした教室で一方的に話し続けるような授業より何倍もの楽しさや充実感があります。
 私は一般生のクラスも長年教えてきましたが、そんな授業にはなかなかなりにくい。日本の学校に通ったことのある人なら想像もつくかと思いますが、授業で各々が意見しそれに対して皆で一緒に考える、などということは高校生にもなるとあまりない。入試勉強ですし「楽しく授業を」とばかりも言えませんが、和気藹々と、しかも真剣に積極的に参加してくれる帰国生の授業はとても充実しています。


●日本の大学進学を考えている人たちへのアドバイス
 さて、現代文・小論文指導の立場からの具体的な学習アドバイスとしては、まず語彙力をつけることです。日常会話での日本語と入試の問題に出てくる日本語のレベルは確実に違います。出題される文章の難度が上がれば出てくる語彙も当然難しくなりますし、日常会話では使わないような言い回しも当たり前のように出てきます。海外滞在中も意識して日本語の語彙を増やす努力をしてほしいのです。
 日本語が苦手という人にお薦めなのは漢字の問題集の活用です。最近の問題集は言葉の意味も書いてくれているのでこれを活用しない手はありません。漢字を覚えながら言葉の意味も学んでいけば一石二鳥です。漢字も語彙力もある程度自信があるという人はできるだけ多くの日本語の文章に触れ、知らない言葉や言い回しをその都度こまめに調べて覚えていくようにしましょう。言葉の習得には地道な作業が必要です。
 それともう一つ、読むことをおろそかにしないように。「帰国入試→小論文」という連想からか書くことばかりに意識が向きがちですが、文章が読めないのに書けるという人はまずいません。また、実際の小論文の入試問題でも課題文の内容を説明したり、まとめたりすることが多く課されます。実は、小論文の練習を積んで自分の考えを述べることに慣れてきた人でも意外とつまずきやすいのがこの部分です。内容や問われていることを把握し損なって、見当違いの意見を述べてしまう場合も多く見受けられます。文章を読むというのは書き手の意見に耳をすませることです。そして、その意見をよく聞いた上で、それについてどう考えたかを他の人にもわかるように文章にして述べるのが小論文です。「読む」と「書く」、どちらの力も重要です。


●帰国生に期待すること
 帰国生と一括りに言いますが、滞在国や滞在年数、滞在形態も多種多様です。しかし、いずれにせよ共通して言える帰国生の強みとは、日本という社会や文化を距離を置いて見る(=対象化する)ことができるということだと私は思っています。日本でしか暮らしたことのない私のような人にとってそんな機会はあまりありません。
 もちろん日本で暮らしていても、海外の情報や海外の国から日本がどう見られているかといった情報はいくらでも手に入るようになりました。しかし、そうやって手に入れた情報も結局は知識でしかなく、どれだけ知識を集めて理解できたような気になったとしても、それは経験に裏づけられた実感とは程遠いものです。それに対して、実際に外国の社会や文化の中で暮らすことで身に付いた感覚は、単なる知識の集積に代えることのできない貴重な生きた感覚です。
 海外で暮らしたからこそわかる日本らしさ、その良いところや悪いところを一方的に称賛するのでも否定するのでもなく、距離を置いて冷静に眺める機会を持てるのは、何ものにも代え難い素晴らしい経験だと思います。そして、皆さんはそれぞれの国の文化や価値観などの良いとこ取りができる立場です。だからこそ、その立場から自分の考えや意見をどんどん発信していってほしい。それがこれからの日本を少しずつでも確実に良いものにしていける礎になると思いますし、日本の大学が皆さに期待することの一つにその役割があるように思うのです。



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