ESSAY

目は口以上にものを言い
代々木ゼミナール帰国受験科英語講師 大島 昇


●帰国生の特徴?
 以前から、どうにも閉口してしまう質問が一つあります。「帰国生の特徴は何ですか?」というのがその質問です。困ったことに、今だに良い答えが見つからないのです。漠然とした質問なのだから、漠然と答えればいいのかもしれませんが、それではどうにも納得がいきません。
先日またその質問を受け、今回は勢いにまかせて「強いて挙げるとすれば、『目線』でしょうか。」と答えてしまいました。
このエッセイでは何故このように私が答えてしまったのかについて、お話したいと思います。

●昔話と怖い話と自慢話
 ずいぶん前の話ですが、早見優さんをテレビで初めて見た時に「あっ、帰国生だ!」と叫んだことを覚えています。その時点では彼女が帰国生であることを全く知らなかったのですが、あるものにピンときたのです。
 少しいやな話になりますが、時々帰国生が街で、いわゆる「怖いお兄さん」に因縁をつけられたという話を耳にします。先方の言い掛かりは「なにガンを飛ばしてるんだ!」とか「なんか文句あるんか!」と相場が決まっていますが、こうしたことに巻き込まれるのは決まって帰国して間もない帰国生なのです。お兄さんたちも、あることに反応したのではないでしょうか。
 ごく最近まで、私には自慢できることが一つありました。それは“見ただけで、8割くらいの確率で帰国生を言い当てられる”ことでした。このときの“帰国生を見分ける判断基準”は、私の早見優さんの話や、怖いお兄さんたちの話とも共通しているものではないかと思っています。

●帰国生判別法?
 帰国生の判別法は単純に『目線』または『目つき』だったのです。早見優さんも他の多くの帰国生も、どこか海外で生活した経験のない人と比べると、目線が違っているように感じられます。おそらく、怖いお兄さんたちの場合は、この帰国生独特の『目線』、というよりはむしろ『目つき』に反応したのでしょう。
どこが違うのかと更に問われると、ますます閉口してしまいますが、とりあえず帰国生は目線が違うのです。説明するのは困難ですが、あえて言葉にすると、『目線が強い』ということになります。ちょっと前に流行った表現では、帰国生には『めぢから目力』があるのです。
 表面的な特徴としては、目線を逸らさないことがあります。一般的な日本人は、長い間相手と目線を合わせ続けることをあまりしません。さり気なく目線を逸らすものです。ところが、帰国生は平気で相手の目を食い入るように見つめ続けます。目を見開いて相手を見ることも多いようです。これが特に「なにガンを飛ばしてるんだ!」の原因ではないかと思います。
 この他に内面的な要因もあるのかと思います。自分の意思を強く持っていることや、自分に自信があることです。外国の教育制度やその背景にある文化が、ハッキリとした意思や強い個を重視することが多いので、海外の学校に長い間通っていると、そうしたものが自然と身に付くのではないでしょうか。そして、その内面の強さが、強い目線や目つきという形で表れているのだと思います。
 Eyes are as eloquent as the tongue(目は口ほどに物を言う)と言いますが、帰国生の場合はEyes are more eloquent than the tongue(目は口以上にものを言う)といったところでしょうか。

●最近感じること
 しかし、最近この帰国生の『目線』の違いを感じることが少なくなってきました。それにしたがって、私が帰国生を言い当てられる確率もずいぶんと落ちてきました。
 その原因として考えられることは、海外での滞在期間が短くなってきたことや、日本人社会の中だけで生活していた人が多くなってきたことです。海外に滞在していた期間が日本国内で過ごしたのと変わらない、あるいは日本で生活した期間の方が長い帰国生が増えてきています。帰国生ならではの『強い目線・目つき』が身につかないままに日本に帰国している人が増えてきているようです。つまり、帰国生らしい帰国生が減ってきたように感じます。もちろん、その分だけ日本社会に適応するときに生じる問題が少なくなってきたのですが、、、それでは海外で過ごした時間が無駄になりますし、学校の帰国生枠入試の意味もなくなってしまいます。残念です。

●未来の帰国生に望むこと
 意識して身に付けることのできないようなもの、例えば目線や目つきなどが、自然に身についている状態になって、はじめて、帰国生は帰国生としての意味をもつのです。そのためには海外にいる間は現地の文化に「どっぷり浸かる」ことです。そして現地の生活を体に染み込ませておいてください。
 帰国生らしい帰国生は「違っている」ので、日本の社会に適応してゆくときに多少の問題を感じるかもしれません。しかし、その文化の衝突や日本社会への適応の過程の中から、帰国生ならではの「良さ」や「強み」や「エネルギー」が生まれてくるのです。そして、問題が生じた時には私たちに声をかけてください。全力でサポートしますから。



| ESSAYメニュー |