| ESSAY |
| 25年ぶりの再会 ―私の故郷、大阪への「帰国」回想記― |
| 代々木ゼミナール帰国受験科国語講師 木村勧 |
| ●故郷、大阪への「帰国」 大阪で出身高校の同窓会が開かれるとの通知を受け取ったのは、夏の終わり頃だった。高校を出てから実に25年ぶりの級友たちとの再会である。いったい皆は今、どんなふうになり、どんな日々を過ごしているのだろうか。まさか、皆も私が代ゼミの講師をしているとは知りはしまい…等々と、再会の日々が心待ちになっていた。そうして、そこで何が起こるか、期待に胸をふくらませ、9月半ばの某日、大阪の同窓会会場へと向かったのだった。 ●25年ぶりの同窓会 25年ぶりの同窓会は、クラス45人中20人が集まり、歳月を隔てた同窓会にしては、人数の面でも、まずまずの盛況であった。そして、集まった級友たちは、予想どおりといおうか、いや予想もできなかった程に、甚しく変貌していた。もはや昔の「原形」をとどめていないような彼ら(もちろん私もそのうちの1人なのであるが)を前に、しばし誰が誰であるかわからないようなありさまであったが、やはりそこは、昔、日々を共にした仲間である。話が進むうちに、彼らの18歳の横顔が、現在の彼らの顔の上に重なり、ストロボのように過去と現在の姿とが交互に明滅するように感じられたのだった。 会では、各自の近況報告が中心となり、リストラの嵐の中で大変な男性陣と、肌の色つやも良く、家庭に入り、なんだか幸せそうな女性陣たちとのコントラストも愉快であった。会は、高校近くの中華料理店で開かれていたが、誰かの「高校の正門の所で校歌を歌おうぜ。」との声に、皆で母校へとくり出す運びとなった。三々五々連れ立って、様変わりはしたものの、当時の面影を所々にとどめる通学路を辿っていくうちに、彼らと共にこの道を歩いた日々の光景が、次々と私の胸に去来した。懐かしさがこみあげてきた。 しかし、同窓会での出来事はそれだけであった。同窓会とは、きっとそんなものなのであろう。今は、皆、全く別々に生活しているわけであるし、また次の会まで顔を会わせることもないだろう。結局、同窓会では、それなりの新鮮さは感じられたものの、私にとって、期待していたほどの「成果」は得られないまま、東京への帰路についた。 ●思いもよらなかった、「私」との再会 ところが、である。東京へ戻り、周りの者に同窓会の様子を語ったりしているうちに、様相が変わってきたのである。ジワリ、ジワリと、ボクシングのボディーブローのように、体の芯から「25年前」が、私によみがえってきた。(25年の歳月は、再現されるにも時間を要する程、長期のものなのであろう。)忘れていたことさえ忘れてしまっていたような、25年前の学校での細かな日常が鮮やかによみがえってきたのだ。授業中、先生の目をごまかして、勉強している姿勢のままで居眠りをしていた吉田、校庭での野球で外野フライを捕りそこなってしょげきっていた大塚等々、フラッシュバックのように次々と再現されてきた。そして、同時に、当時の自分の姿が、その当時の生々しい感覚を伴ったままよみがえってきたのである。 25年前の私は、自分が嫌でしようがなかった。当時の私は、自分がどんな存在なのかまるでわかっていなかった。どんな時にどんな感情を示したら自然なふるまいといえるのか、そんなことさえぎこちなく、ただただもがいていた。自分という実体を感じとれず、まるで自分が「人間」でないような感じさえもっていた。具体的な生活においても、常に大学受験が頭にこびりついて離れず、「やらなきゃ。やらなきゃ。そうでないと、とんでもないことになるぞ。」と、脅迫観念のみが先行し、あせるばかりの毎日であった。私は、そんな自分が情けなくてたまらなかった。 しかし、今、私の前に再現した25年前の私には、当時の私とは明らかに異なる点があった。現れた私は、ただの「醜いアヒルの子」ではなかったのだ。悩み、おちこむ自分が、18歳という若い時の光に包まれて再現したのだ。私を含め、私の仲間たちも、校庭に降りそそぐ陽光とともに光に満ちていた。若さ、希望、未来、そういった輝かしい光が、誰からも発散していた。当時の私は、その光の光源でありながら、自らが放出する光の輝きに気付かずにいたのだ。悩み、落胆し、煩悶していた18歳の自分は、何とも新鮮で、未来を秘めた、若さに輝く存在であったのだ。 ●今を生きる 高校生の諸君。君たちは、今まさに、その光輝く時を生きているのだ。悩み苦しんでいても、常に若さの輝きの光の中に存在しているのだ。諸君より25年先輩として、私から君たちに伝えたい。今を捨てるな!帰国し、友達等の環境が変わろうとも、また、受験への不安におののこうともかまわない。悩み、苦しみ、もがきながらも、自らが今放つ光を実感し、果てしない希望の空、21世紀の空へはばたいていってほしいのだ。 |
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